私が生まれ育った玉川学園の地形は、多摩丘陵に位置するため、とにかく急な坂が多く、高齢の方々にとってはしんどい街であることは確かです。でもそんな街が今まで愛され続けた理由の一つは、文教地区としてのその静かと、地形の高低差で生み出される豊富なシーケンス、それらの環境が今、刻々と破壊されてきています。
50年程前に親の世代がこの土地に移り住んだ時、玉石によって土留めされた擁壁が並ぶこの土地の風景は、さぞかし美しかったことでしょう。
しかし現在の法律では、地震で倒壊の恐れがあるため、新たな家を建てるときには、擁壁をコンクリートでにつくりかえる必要が出てきます。その景観を損なう擁壁をつくりかえる為の費用負担が建主に降り掛かってきてしまうため、土地はさらに細かく分筆され、上家に回す費用が極端に無くなってきてしまうのが現状です。この現状が、新しい“玉川学園らしさ”として、次の世代へと親しみやすい風景をつくり出せるとは到底思えません。
そもそも家は平らな土地での家づくりしか選択肢を与えている、ハウスメーカーや、ハウスビルダー業者の責任は大きいと思っています。
そこで我々は、玉川学園で、今後どのような家が提案できるのか、ケーススタディーしてみました。
①擁壁を極力なくし、昔の地形に戻す。
昔の山の地盤は造成した土より固く、発生した残土を処分する費用は擁壁をつくるより、遥かに安く上がると言えるでしょう。
②建物を最小単位の大きさに分け、造成する範囲(基礎の部分)を最小限に押さえる。
③従来の縁側のように建物を風や光が通り抜ける、半屋外(半屋内)の層で建物全体を覆い、心地よく自然を取り入れる。
同時に周辺地域との関係性とを分離せず、新しい地域社会を形成する。
④昔の記憶として、撤去した玉石を地面の演出としてしき込む。
これは設定した土地の写真です。
同じ角度から観たCGです。
開放感が出て、道からの印象が随分かわります。
詳細内容にご興味のある方は、
HPに一部写真、CGを掲載しましたのでご覧ください。
また是非、当事務所にもお立ち寄りくださ。